- 2019-5-31
- 幹細胞
山崎 聡(東京大学医科学研究所 幹細胞生物学分野)特任准教授(幹細胞生物学分野)を中心とした研究チーム(スタンフォード大学と理化学研究所との共同研究チーム)は
通常の培養で使用する高額なウシ血清成分やアルブミンの代替として液体のりの主成分であるポリビニルアルコール(PVA)を用いることで、安価に細胞老化を抑制した造血幹細胞を大量に培養することに成功。
大量培養が実現すれば、臍帯血移植に使う造血幹細胞の不足が解消でき、
骨髄移植のためのドナーの負担を軽くできたりすることが期待できる。
また、別の幹細胞も培養できそうだといい、山崎さんは「再生医療や基礎研究に大きく貢献できるかも知れない」と話す。
これにより、
・安価に細胞老化を抑制した造血幹細胞の増幅が可能
・1個の造血幹細胞を得ることができれば複数の個体へ造血幹細胞移植が可能
・ヒト造血幹細胞にも応用可能であると期待されおり、主に小児の血液疾患に対して移植処置の合併症リスクを軽減した安全な造血幹細胞移植が提供できることが期待
・幹細胞治療や再生医療への応用や医療コストの軽減に期待
従来は、白血球や赤血球に変われる造血幹細胞は、500mlで数万円するような培養液でも増やすことが難しく、白血病の治療はドナーの骨髄や臍帯血(さいたいけつ)の移植に頼る場面が多かった。
研究チームは、培養液の成分などをしらみつぶしに検討し、その一つであるポリビニルアルコール(PVA:洗濯のりや液体のりの主成分)で培養したところ、幹細胞を数百倍にでき、白血球などが実際に作られることも確認した。
また、実際にコンビニの液体のりでも培養できることを確認した。
共著者で理化学研究所で細胞バンクを手がける中村幸夫室長は「結果を疑うほど驚いた。研究者はみんな目からウロコではないか」と話した。
参考:東京大学・日本医療研究開発機構(AMED)https://www.amed.go.jp/news/release_20190530.html
論文は英科学誌ネイチャー(https://www.nature.com/articles/s41586-019-1244-x)に掲載される。