- 2019-8-26
- がん
スイスのバーゼル大学の研究チームは、抗がん剤と糖尿病治療薬を組み合わせることで、乳がん細胞を脂肪に変えることに成功した
抗がん剤と糖尿病治療薬の組み合わせで
上皮間葉転換とは、周囲の細胞と接着する上皮細胞がその機能を失い、周囲と結合せず、運動性の高い「間葉」の特性を持つ細胞へと形質が変化するプロセスを指し、間葉上皮転換は、逆に、間葉系細胞が運動性を失い、上皮細胞の形質を得る現象をいう。がん細胞は、これらのプロセスを用いて次々と転移し、体中に広がっていく。
研究チームでは、上皮間葉転換や間葉上皮転換が進行中の細胞は可変状態にあることに着目。ヒトの乳がん細胞を雌のマウスの乳腺脂肪体に移植したうえで、食品医薬品局で承認されている抗がん剤「トラメチニブ」と2型糖尿病治療薬「ロシグリタゾン」をこれらのマウスに投与した。
その結果、乳がん細胞が脂肪細胞に変化したほか、原発腫瘍の成長が抑制され、転移も防ぐことができた。また、長期の培養実験によると、がん細胞から変化した脂肪細胞が乳がん細胞に再び戻ることはなかった。「トラメチニブ」ががん細胞から幹細胞への移行プロセスを高め、「ロシグリタゾン」の作用と相まって、幹細胞から脂肪細胞への転換がすすんだためとみられている。
上記記事の引用元
Newsweek日本語版